
『コダック・モーメント』とは?
『コダック・モーメント(Kodak Moment)』は、もともと写真フィルムメーカーのコダック(Kodak)が使用していた広告スローガンで、「人生のかけがえのない瞬間を写真に収めるべきタイミング」を意味します。しかし、現在ではこの言葉は「企業が技術革新や市場の変化に対応できず、衰退する瞬間」を指す比喩としても使われるようになりました。
同時期にフイルム業界のトップを争っていた「富士フイルム」の変化への対応とよく比較されます。
コダックの失敗と「コダック・モーメント」
コダックはかつて世界最大の写真フィルムメーカーでしたが、デジタルカメラの台頭に適応できず、2012年に経営破綻しました。この背景には以下の要因があります。
デジタルカメラの発明と無視
1975年にコダックのエンジニアが世界初のデジタルカメラを開発しましたが、会社はフィルム事業の収益を守るためにこの技術を積極的に活用しませんでした。
その結果、ソニーやキャノンなどの企業がデジタル市場を開拓し、コダックは出遅れました。
ビジネスモデルの固定化
コダックは「フィルムを販売することで利益を得る」ビジネスモデルに固執し、新しい収益構造を構築できませんでした。
その間にスマートフォンの普及によって写真撮影の方法が大きく変化し、コダックは市場での競争力を失いました。
時代の変化への対応遅れ
SNSの普及により、人々は「プリント写真」ではなく「デジタル写真の共有」を重視するようになりましたが、コダックはこのトレンドを活かせませんでした。
このように、コダックは自社の技術革新を活かせず、市場の変化に適応できなかったため、衰退しました。この事例が「コダック・モーメント」として語られるようになったのです。
コダック以外の「コダック・モーメント」事例
ノキア(Nokia) – スマートフォン革命に乗り遅れた携帯電話メーカー
かつて携帯電話市場で圧倒的なシェアを誇ったノキアは、スマートフォンの台頭に適応できず、急速に市場から姿を消しました。
失敗の要因
iPhone(Apple)やAndroid(Google)の登場にもかかわらず、独自のOSにこだわり続け、アプリエコシステムを築けなかった。
結果
2013年に携帯電話事業をマイクロソフトに売却し、業界リーダーの地位を失いました。
ブラックベリー(BlackBerry) – 物理キーボードへのこだわり
かつてビジネスマン向けのスマートフォン市場で圧倒的な支持を得ていたブラックベリーは、タッチスクリーン型のスマートフォンが主流になる中で競争力を失いました。
失敗の要因
物理キーボードにこだわり、アプリストアの開発を軽視した。
結果
AppleやSamsungに市場を奪われ、2022年にはスマートフォン事業を終了。
ヤフー(Yahoo!) – Googleとの検索エンジン競争に敗北
インターネット黎明期には検索エンジンのトップ企業だったヤフーは、Googleのアルゴリズム技術の進化に適応できず、広告収益を奪われました。
失敗の要因
ディレクトリ型検索(人手によるカテゴリ分類)にこだわり、Googleの自動化された検索技術に遅れをとった。
結果
2017年にコア事業をVerizonに売却。
トイザらス(Toys “R” Us) – EC(電子商取引)への適応遅れ
かつて世界最大の玩具販売チェーンだったトイザらスは、Amazonなどのオンライン販売の台頭に適応できませんでした。
失敗の要因
オンライン販売の強化を後回しにし、実店舗中心の戦略を維持。
結果
2017年に破産を申請。
「コダック・モーメント」を防ぐために
これらの企業の失敗事例から学べることは、市場の変化に適応する柔軟性の重要性です。
会社のトップや経営陣が目先の利益だけを見ていて、先のことを考えて行動しないとこのようになります。
未来のトレンドを見極める
技術革新が市場をどのように変えるのかを常に意識する。
新しいビジネスモデルを模索する。
既存の成功にとらわれない
かつての成功モデルが未来でも通用するとは限らない。
競争環境の変化に合わせて戦略を変更することが重要。
顧客のニーズに敏感になる
ユーザーの行動変化を観察し、適切に対応する。
例えば、写真を「現像する」から「SNSで共有する」時代へ移行したように、消費者の価値観を理解する。
まとめ
『コダック・モーメント』は、もともと感動的な瞬間を写真に収めることを指す言葉でしたが、現在では「市場の変化に適応できず、企業が衰退する瞬間」の意味で使われることが多くなっています。
コダックだけでなく、ノキア、ブラックベリー、ヤフー、トイザらスなども同様に市場の変化に適応できず、大きな影響を受けました。これらの事例を教訓にし、未来の変化に柔軟に対応することが、企業が長く生き残る鍵となります。
自動車業界のEV化なども消費者ニーズが変化しつつあるときにいかにして先を見抜け行動できるか経営陣のリーダーシップが問われています。
また、企業だけでなく、個人のキャリアにおいても「コダック・モーメント」を回避するために、学び続ける姿勢が重要です。
中国の言葉では、勉強しないで過去の知識だけの人を「乞老本(チーラオポン)昔の本で食べている」 と言います。