
顧客は「製品」ではなく「進歩」を買っている?
~ジョブ理論(ジョブズ・トゥ・ビー・ダン)から学ぶビジネスの本質~
1. ジョブ理論とは?
「ジョブ理論(Jobs to Be Done Theory)」は、元ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン氏らによって提唱された、顧客の本当のニーズ=「達成したい進歩(ジョブ)」を理解するための理論です。
顧客は「製品」を買うのではなく、「ある目的(ジョブ)」を達成するために製品を「雇っている(Hire)」。
たとえば、ある人が朝にコンビニでバナナを買うのは「健康に良い朝食を手軽に済ませたい」という“ジョブ”を達成するためです。バナナという商品は、そのジョブをこなすために“雇われている”というわけです。
2. なぜジョブ理論が注目されるのか?
従来のマーケティングは、「属性」や「セグメント(年齢・性別・所得)」に基づいたアプローチが主流でした。しかし、ジョブ理論は**「なぜその商品を使いたいのか?」という“動機”に焦点**を当てます。
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✅ 「どんな人か?」ではなく「何のために使うのか?」に着目
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✅ 表面的なアンケートでは見えない“隠れたニーズ”がわかる
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✅ 顧客の“進歩”を支援する新しい商品やサービスが生まれる
3. ジョブ理論の代表的な事例
◆ マクドナルドのシェイク
ある調査では、朝の通勤時間帯にシェイクを買う人が多いことが判明しました。理由は以下の通り:
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車で片手で飲める
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朝の空腹を満たしてくれる
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飲んでいる間、退屈しのぎになる
つまり、この人たちは「朝の通勤時間を満たす」というジョブのために、シェイクを“雇っていた”のです。
4. ジョブを見つける方法
ジョブを見つけるには、次のような質問が役立ちます:
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その商品を買う前、何に困っていたのか?
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なぜ今その商品を選んだのか?
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他の選択肢ではなぜダメだったのか?
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商品を使ってどんな結果が得られたか?
また、以下の4つの視点でジョブを探すことが有効です。
ジョブの種類 | 具体例 |
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機能的ジョブ | お腹を満たしたい、早く移動したい |
感情的ジョブ | 安心したい、自信を持ちたい |
社会的ジョブ | 周囲から良く思われたい、話題に乗りたい |
組み合わせ型 | 例:Apple Watch(健康管理+ステータス) |
5. ジョブ理論をビジネスに活かすには?
✅ 商品開発に
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機能を増やすより「どんな進歩を提供できるか?」を考える
✅ サービス改善に
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顧客が「本当にやりたいこと(ジョブ)」に寄り添うことで満足度が上がる
✅ マーケティング戦略に
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商品そのものではなく、「顧客が得たい変化」を訴求する
6. まとめ:ジョブ理論で“顧客の本音”に迫る
ジョブ理論を通じて分かるのは、顧客は「スペック」ではなく「進歩」を求めているという事実です。
もしあなたが製品やサービスを提供しているなら、
「この商品は、誰の、どんなジョブを解決するために“雇われる”のか?」
この問いを常に持ち続けることが、顧客に選ばれる鍵になります。
🔍おすすめ書籍
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『ジョブ理論』(クレイトン・クリステンセン 著)
-
『デザイン思考とジョブ理論』(アラン・クレメンツ 著)