『心理的安全性』が職場で必要な理由
① 意見やアイデアが出やすくなる
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メンバーが「批判されない」「バカにされない」と安心していると、自分の考えや提案を出しやすくなります。
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失敗や課題も正直に共有できるため、問題発見や改善が早くなる。
② イノベーションが生まれやすくなる
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新しいアイデアは批判を恐れると出にくくなります。
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安心して発言できる環境があると、自由で多様なアイデアが集まり、革新的な取り組みが生まれやすくなる。
③ チームのパフォーマンス向上
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心理的安全性が高いチームは、協力し合い、助け合う文化が育ちます。
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結果として、プロジェクトの成功率や業務効率も向上します。
④ 人材の定着・離職防止
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不安やストレスの多い職場は離職率が高まります。
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安心して働ける職場は、長く働きたいと感じる社員が増え、人材の定着につながります。
⑤ 学習と成長の促進
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間違いを恐れずに学べるため、社員一人ひとりのスキルアップが進みやすくなる。
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OJTやフィードバックも活発になり、育成が促進される。
⑥ リスクの早期発見・未然防止
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問題があっても「言いにくい」職場では、ミスや不正が隠されがちです。
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心理的安全性が高い職場では、早い段階で問題が共有され、大事になる前に対応できます。
プロジェクト・アリストテレス
心理的安全性については、Gooleによって、検証されています。
それが、いかに示す、『プロジェクト・アリストテレス』です。
● 実施主体
Google(2012年〜2014年頃)
● 目的
「なぜあるチームは成果を出し、あるチームは成果が出ないのか?」
→ 成果を出すチームの共通要素 を特定するための研究
● 名前の由来
アリストテレスの名言
「全体は部分の総和以上のものである」
から名付けられました。
■ 調査の進め方
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Google社内の180以上のチームを対象に調査
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数百の要素(スキル、個性、学歴、経験、性格など)を分析
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膨大なデータを機械学習で解析
■ 調査結果:成果を出すチームの5つの因子
順位付けで示します。
順位 | 因子名 | 内容 |
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① | 心理的安全性(Psychological Safety) | 「このチームでは安心して発言できる」とメンバーが感じているか |
② | 信頼性(Dependability) | メンバーが責任を持ち、期限を守って仕事をする |
③ | 構造と明確さ(Structure and Clarity) | 役割・目標・計画が明確になっているか |
④ | 仕事の意味(Meaning of Work) | 仕事に個人的な意味・価値を見いだしているか |
⑤ | 仕事のインパクト(Impact of Work) | 自分の仕事が社会や会社に貢献していると感じるか |
■ 最大のカギが「心理的安全性」
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Googleの調査では 「心理的安全性が最も重要」 だと結論づけました。
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なぜなら、心理的安全性が高いと
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意見が出やすい
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失敗を恐れず挑戦できる
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問題を早期に共有できる
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チームの学びが進む
からです。
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■ 補足:よくある誤解
誤解 | 実際 |
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「仲良しグループが良いチーム」 | 必ずしも仲が良い必要はない。 意見の違いも受け入れ、安心して議論できる環境が大切。 |
「能力が高い人を集めれば良い」 | 高能力者の集まりでも、心理的安全性が低ければ成果が出ない。 |
■ 実務への示唆
プロジェクト・アリストテレスの結果は、現場のマネジメントで非常に役立ちます。
例:
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管理職は「反論されやすい雰囲気」を作る
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失敗を叱るより、学びを促す
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メンバーの発言を遮らない
【心理的安全性 診断チェックリスト】
■ 回答方法
各項目について、以下のいずれかで答えてください。
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①あてはまる
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②ややあてはまる
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③あまりあてはまらない
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④まったくあてはまらない
No | 設問 |
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1 | チーム内で自由に自分の意見やアイデアを発言できる雰囲気がある。 |
2 | 誰かがミスをしても、責めるのではなくサポートし合う文化がある。 |
3 | 上司やリーダーに対しても、率直に意見を言いやすい。 |
4 | 会議や打合せで、一部の人だけでなく全員が発言する機会がある。 |
5 | 自分の役割や目標が明確に共有されている。 |
6 | 新しいアイデアや挑戦を歓迎する文化がある。 |
7 | 困ったときに同僚や上司に気軽に相談できる。 |
8 | 失敗や問題が早い段階で共有され、対策が話し合われている。 |
9 | チーム内で誰かの発言を小馬鹿にしたり、軽視する雰囲気はない。 |
10 | チームのメンバーが相互に信頼して仕事を任せ合っている。 |
■ 簡易判定基準
合計スコア | 状態 |
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30点以上(多くが①②) | 心理的安全性は高い |
20〜29点 | 改善余地あり |
19点以下(③④が多い) | 心理的安全性が低い可能性大 |
■ 補足:活用のポイント
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チーム全員で実施 → 認識のズレを確認できる
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半年〜1年に1回実施 → 改善の効果を測定できる
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リーダーの自己診断にも活用 → マネジメント改善のヒントになる
心理的安全性のない職場の特徴
特徴 | 内容 | 例 |
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発言の萎縮 | 意見・質問・提案をすると批判や否定をされる | 「そんなことも知らないの?」と言われる |
失敗を許容しない | ミスをすると責任を強く追及される | ミス=能力不足とみなされる |
責任のなすりつけ | 問題が起きた時に誰が悪いか探しが始まる | トラブルの原因探しが人に向く |
上司の一方通行の指示 | 部下の意見を聞かず命令だけが下される | 「口出しせずに言われた通りにやれ」 |
噂・陰口が横行 | 他人の悪口・評価が飛び交う | 「〇〇さんは使えない」と陰で話す |
助け合いがない | 困っていてもサポートを求めにくい | 「それはあなたの責任でしょ」と突き放される |
公平感の欠如 | 特定の人だけが優遇・冷遇される | えこひいき・不透明な評価 |
緊張感が常にある | 皆が常に顔色をうかがう | 上司の機嫌次第で雰囲気が悪化 |
心理的安全性がないとどうなるか?
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創造性の低下
→ 新しいアイデアが出なくなる -
エンゲージメント低下
→ 仕事への意欲が下がる -
離職率の上昇
→ 優秀な人から辞めていく -
情報共有の不足
→ 問題が表面化せず、大きなトラブルに
参考イメージ
✅ 安心して話せる職場
❌ 「何を言っても無駄」「叩かれるかも」と感じる職場