『心理的安全性』が職場で必要な理由

意見やアイデアが出やすくなる

  • メンバーが「批判されない」「バカにされない」と安心していると、自分の考えや提案を出しやすくなります。

  • 失敗や課題も正直に共有できるため、問題発見や改善が早くなる。


イノベーションが生まれやすくなる

  • 新しいアイデアは批判を恐れると出にくくなります。

  • 安心して発言できる環境があると、自由で多様なアイデアが集まり、革新的な取り組みが生まれやすくなる。


チームのパフォーマンス向上

  • 心理的安全性が高いチームは、協力し合い、助け合う文化が育ちます。

  • 結果として、プロジェクトの成功率や業務効率も向上します。


人材の定着・離職防止

  • 不安やストレスの多い職場は離職率が高まります。

  • 安心して働ける職場は、長く働きたいと感じる社員が増え、人材の定着につながります。


学習と成長の促進

  • 間違いを恐れずに学べるため、社員一人ひとりのスキルアップが進みやすくなる。

  • OJTやフィードバックも活発になり、育成が促進される。


リスクの早期発見・未然防止

  • 問題があっても「言いにくい」職場では、ミスや不正が隠されがちです。

  • 心理的安全性が高い職場では、早い段階で問題が共有され、大事になる前に対応できます。

プロジェクト・アリストテレス

心理的安全性については、Gooleによって、検証されています。

それが、いかに示す、『プロジェクト・アリストテレス』です。

● 実施主体

Google(2012年〜2014年頃)

● 目的

「なぜあるチームは成果を出し、あるチームは成果が出ないのか?
成果を出すチームの共通要素 を特定するための研究

● 名前の由来

アリストテレスの名言

「全体は部分の総和以上のものである」
から名付けられました。


■ 調査の進め方

  • Google社内の180以上のチームを対象に調査

  • 数百の要素(スキル、個性、学歴、経験、性格など)を分析

  • 膨大なデータを機械学習で解析


■ 調査結果:成果を出すチームの5つの因子

順位付けで示します。

順位 因子名 内容
心理的安全性(Psychological Safety) 「このチームでは安心して発言できる」とメンバーが感じているか
信頼性(Dependability) メンバーが責任を持ち、期限を守って仕事をする
構造と明確さ(Structure and Clarity) 役割・目標・計画が明確になっているか
仕事の意味(Meaning of Work) 仕事に個人的な意味・価値を見いだしているか
仕事のインパクト(Impact of Work) 自分の仕事が社会や会社に貢献していると感じるか

■ 最大のカギが「心理的安全性」

  • Googleの調査では 「心理的安全性が最も重要」 だと結論づけました。

  • なぜなら、心理的安全性が高いと

    • 意見が出やすい

    • 失敗を恐れず挑戦できる

    • 問題を早期に共有できる

    • チームの学びが進む
      からです。


■ 補足:よくある誤解

誤解 実際
「仲良しグループが良いチーム」 必ずしも仲が良い必要はない。
意見の違いも受け入れ、安心して議論できる環境が大切。
「能力が高い人を集めれば良い」 高能力者の集まりでも、心理的安全性が低ければ成果が出ない。

■ 実務への示唆

プロジェクト・アリストテレスの結果は、現場のマネジメントで非常に役立ちます。
例:

  • 管理職は「反論されやすい雰囲気」を作る

  • 失敗を叱るより、学びを促す

  • メンバーの発言を遮らない

【心理的安全性 診断チェックリスト】

■ 回答方法

各項目について、以下のいずれかで答えてください。

  • ①あてはまる

  • ②ややあてはまる

  • ③あまりあてはまらない

  • ④まったくあてはまらない


No 設問
1 チーム内で自由に自分の意見やアイデアを発言できる雰囲気がある。
2 誰かがミスをしても、責めるのではなくサポートし合う文化がある。
3 上司やリーダーに対しても、率直に意見を言いやすい。
4 会議や打合せで、一部の人だけでなく全員が発言する機会がある。
5 自分の役割や目標が明確に共有されている。
6 新しいアイデアや挑戦を歓迎する文化がある。
7 困ったときに同僚や上司に気軽に相談できる。
8 失敗や問題が早い段階で共有され、対策が話し合われている。
9 チーム内で誰かの発言を小馬鹿にしたり、軽視する雰囲気はない。
10 チームのメンバーが相互に信頼して仕事を任せ合っている。

■ 簡易判定基準

合計スコア 状態
30点以上(多くが①②) 心理的安全性は高い
20〜29点 改善余地あり
19点以下(③④が多い) 心理的安全性が低い可能性大

■ 補足:活用のポイント

  • チーム全員で実施 → 認識のズレを確認できる

  • 半年〜1年に1回実施 → 改善の効果を測定できる

  • リーダーの自己診断にも活用 → マネジメント改善のヒントになる

 

心理的安全性のない職場の特徴

特徴 内容
発言の萎縮 意見・質問・提案をすると批判や否定をされる 「そんなことも知らないの?」と言われる
失敗を許容しない ミスをすると責任を強く追及される ミス=能力不足とみなされる
責任のなすりつけ 問題が起きた時に誰が悪いか探しが始まる トラブルの原因探しが人に向く
上司の一方通行の指示 部下の意見を聞かず命令だけが下される 「口出しせずに言われた通りにやれ」
噂・陰口が横行 他人の悪口・評価が飛び交う 「〇〇さんは使えない」と陰で話す
助け合いがない 困っていてもサポートを求めにくい 「それはあなたの責任でしょ」と突き放される
公平感の欠如 特定の人だけが優遇・冷遇される えこひいき・不透明な評価
緊張感が常にある 皆が常に顔色をうかがう 上司の機嫌次第で雰囲気が悪化

心理的安全性がないとどうなるか?

  • 創造性の低下
     → 新しいアイデアが出なくなる

  • エンゲージメント低下
     → 仕事への意欲が下がる

  • 離職率の上昇
     → 優秀な人から辞めていく

  • 情報共有の不足
     → 問題が表面化せず、大きなトラブルに


参考イメージ

✅ 安心して話せる職場
❌ 「何を言っても無駄」「叩かれるかも」と感じる職場